【四国遍路】愛嬌のある人間こそ最強【44日目】

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朝目が覚める。腹が減る。よし、今日も人間だ。

布団で眠ると身体が痛くならない。連日寝返りを打てないテントの中で寝ているとより実感出来る。

今日の朝はとてもゆっくりだった。森家の家事を少し手伝い、昼頃にマリ姉と讃岐うどんを食べに行く。

地元の人が行くうどん屋はやっぱり安くて、このボリュームで400円前後である。金欠の大学生よろしくトッピング自由と言うキャッチコピーに惹かれてここぞとばかりに盛り付け過ぎてしまったため、見栄えはゲテモノ料理の様相を呈しているが、味はさすがの讃岐うどん。コシがあり、んまい。

その後、昨日乗せていただいたところまで車で送り戻してもらい今日はそこから歩き始めることに。

胃袋は満たされ、体調は万全なため、83番一宮寺にはすぐに到着。

が、、、まさかの体調が万全すぎるが故に、お寺の境内で居眠りしてしまった。のび太か。

気付くと数時間経っていたために慌ててザックを背負い歩き始める。

しばらく歩くと遍路小屋があるという看板を見つけたため寄って行くことに。

そしてここで75番善通寺の通夜堂で一緒になった方と再会する。彼はもう既に結願しており、そのまま小豆島88箇所へと向かうため大窪寺から引き返して来たらしい。さすがの結願4回目の旅人である。俗世感バリバリ出してバーベキューしてた俺とは違う。

ちなみに香川からフェリーで行ける小豆島にも1週間ほどで回れる88カ所霊場があるらしい。

しばらく談笑していると、奥からこの遍路小屋を管理しているというご夫婦が出てくる。なんでもここは名物遍路小屋らしく新聞にも取り上げられていて、個人的に一番驚いたのが、ここに宿泊した方々のメモがもはやブログ並みに長いのである。メモではない。「ありがとうございました(はあと)」的なフランクなものはあまりなく、みんな一様にここのご夫婦の人柄の良さを褒め称える長文を書いていた。

あぁ、ええなぁと思う。さっきお父さんが蚊がたくさんいるからって顔に殺虫剤かけてきたことはもう忘れた。あれはきっと夢だ。

お母さんに今日は泊まって行くのかい?と聞かれる。居眠りしていたために時刻はもう5時だった。お寺は閉まっているが、今日はまだ全然歩いていない。足も元気だ。

結局次の84番屋島寺に少しでも近づくため、もう少し歩くことにする。相変わらず今日の野宿場所はまだ決めていなかった。

ご夫婦と先に結願したお遍路さんと別れ、またもくもくと歩く。辺りは暗くなってくる。四国は暗くなってからが早い。あっという間に夜になる。

野宿リストをちらっとカンニングするが、ポイントまではまだだいぶかかりそうだ。

しばらくしてマリ姉から今日の泊まる場所大丈夫ー?との連絡が入る。

僕は、まだ野宿場所は見つかっていないが山の麓に泊まれそうな所があるらしいので、そこへ向かっているという旨を伝える。しかし、正直ここで僕は、あわよくばまたマリ姉が迎えにきてくれるから大丈夫だろう的な気持ちを抱いてしまっていた。

そういう打算的な気持ちというものは往々にして上手くいかないものである。マリ姉は今日連日の忙しさが祟ったのか体調を崩して少し休みたいとのことで、申し訳ないけど迎えには行けない!とメッセージが入る。

僕は思う。さっきあのご夫婦の誘いを断った時も、心の片隅にこの気持ちはあった。行けるところまで行って距離を詰めて、また森家に泊まればいいのではないかと。その方が効率的じゃないかと。

でもまぁ人生なんてそんなものだ。結局打算的な奴は愛嬌がある奴には敵わないのだと思う。この出来事はそんなことをお大師さんが教訓として教えてくれているような気がした。

「ハラギャテイ ハラギャテイ ハラソウギャテイ ボジソワカ」

どうだっていいじゃないか どうだっていいじゃないか どうにかなるさ ロックに生きようぜ!

声に出してお経を唱えたら逆に元気が出てきた。自分が選んだ選択肢は、自分で味わうから面白いんだ。たとえそれがどんな結果になろうとも。

マリ姉にゆっくり休んで下さいとメッセージを送った後、気を取り直して歩き始める。俄然元気だ。どこまでも行ける気がする!!

「――ピピッ」マリ姉から連絡が入る。

「森にいに連絡したらその近くのホテルとってやり!とのことで今からオススメのホテル連絡するから今日はそこに泊まり!お代は気にしなくていいから!」

――どこまでも行くのをやめた

実際、さっきお大師さんからの教訓を貰ったばかりだったので、とても申し訳ない気持ちになった。迷惑をかけている事を感じる。

しかし、「俊くんがちゃんと寝床確保したの分からないとこっちも安心して寝れないから!」的な殺し文句にヤられ、本当にありがたく、その善意を受け取ることにした。

このことに限ったことではないけれど、道が閉ざされたと思った時、逆に一周回ってカラリとした態度でいると、事態は好転することがこの旅では多くあった。

――ホテルに着く。部屋に入る。

うわああああああああああああああ

ベッドだあああああああああああ

エアコンあるううううううううう

ハイカラだあああああああああああ

調子に乗って今ある持ち物を全力で駆使してBARっぽい写真を撮る。

角度を斜めにしてみてもこれが今出来る全力のBAR感だった。

先日一緒に車中泊をしたお遍路さんからもらった獺祭の焼酎を煽る。五臓六腑に染み渡る。マリ姉から周辺のご飯屋さんを色々聞いたものの食欲より眠気が勝り、晩酌した直後には眠りに落ちていた。

【支出】なし

【歩行距離】12.1キロ

【参拝霊場】83

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【ふぉろーみー】