【四国遍路】なぜ遍路をしているのかとか、どうだっていいじゃないか。【8日目】

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薬王寺の前にある道の駅でテントを張る。ここはテントスポットらしく、僕の他にも5名くらいテントを張っている人達がいた。テントを片付けてしまった後に写真を撮り忘れていたことに気づく。

今日の朝食は昨日お接待で頂いたトマトと隣にテントを張っていた先輩お遍路さんに頂いたみかん。モデルの朝食である。

この先輩お遍路さんは13年前に3度歩き遍路をやり遂げているらしく、いろいろな情報を教えてもらった。中でも菅笠が飛ばないようにする補強はすごく助かった。何でも巡礼の旅マニアらしく、世界的に見ても四国遍路は相当キツイ部類に入るらしい。などと2人で談笑していると、近くに男性がやってきて、電車が来るやいなや慌てた様子で駆け込み乗車をしていった。ーーザックを忘れている。

ーーザックを忘れて電車に乗るってどんだけドジっ子なのか。いろんな人がいる嗚呼遍路道。

手の日焼けがピリリと痛む。

裏側は真っ白。

熟練お遍路さん(逆打ち)に別れを告げ、24番への90キロにも及ぶ道のりを歩き始める。先のことは考えず、一歩一歩行くしかない。道中サルがいた。追剝ぎこわい。

歩道がある分ましなトンネル

昼食は適当に見かけたラーメン屋に入った。牟岐ラーメンが定番だというので頼む。いたって普通のラーメンである。

海岸にたどり着くもこの日は波が荒れていた。この後実際に暴風雨になるのだが、その前兆だったのかもしれない。

国道を一歩外れ、旧街道という看板があった遍路道を通る。一本横が車が多数往来するアスファルトの舗装路とは思えないほど、静寂な時が、一気に場を包む。

旧街道を抜けた途端、誰もいない、プライベートビーチのような砂浜に出る。現実は思っているほど厳しくもないけど、優しくもない。最果てまできたらいつかは振り向いて、現実と向き合わなければならない時が来る。優しい波もあれば、荒い波もあるのだと思う。

危険な岩場を慎重に進む。

ボーッと海を眺めていると、漫画とか映画でよく見るアレが流れてきた。何か入っていると思いきや、何のメッセージもなし。僕の理解力不足なだけかもしれない。

旧街道から国道へと合流し、しばらく歩いていると、ポツポツと降り出し、あっという間に豪雨になった。今日の野宿予定場所の浅川駅はびしょびしょで、急遽、昨日夜食事をご馳走になったご夫婦から聞いた宿に電話をかけるも満員とのこと。しかしこの雨で野宿はキツイだろうというオーナーの方のご好意で、特別に部屋を作ってくれるという。

車で迎えに来てもらいコテージに向かう。オーナーの方はプロサーファーの方で、利用客もほぼサーファーの方らしく、その日も多くの方が泊まっていた。晴れている時はこんな感じ。

当日は雨漏りがひどく、応急処置を急ぎながら、結局先に宿泊している人と相部屋という形で泊まらせて頂くことになった。

僕以外の方は食事処を予約しているらしく出かけるので、「その間これ好きに使って料理して」と、肉と白菜、煮込みカレーラーメンの素を渡される。

まさか自分で料理することになるとは思わなかったが、何だか楽しくなってきたので男飯を作る。まず1つ目、「ご飯と肉」

2つ目、「煮込みカレーラーメン」

2つとも全く何のひねりもなくて男飯っぽい。ご飯は炊いておいてあったので、遍路中にはなかなか体験できない「お腹いっぱい」になることが出来た。

食器を洗い、風呂に入り、洗濯をし終えた頃にみんなが帰ってくる。陽気な感じで軽く宴をしようということで、ワインで乾杯をした。が、結論から言うと、この乾杯は僕には煩わしいものとなってしまった。

開口一番に「なんで遍路してるの?」とあっさりと聞かれた。お遍路さんにとって1番難しい質問の1つは「なぜお遍路をしているのか」であると思う。人それぞれ、三者三様の理由があると思う。もしくは明確な理由など分からない人も多いかもしれない。ただ、腹を割って話さない限りは、ましては初対面の相手にすんなりと答えられる質問ではない。

しかし、県外の方が多かったのもあり、お遍路さんに自体に物珍しさを感じ、なぜ?なぜ?と聞かれ、その気持ちもわかるのだが、僕はそれに一抹の煩わしさを感じてしまった。

坂爪圭吾さんも言っていたのだが、端的に言って「耳を塞いでしまいたくなった」

特に、若くして遍路をやっているとよく聞かれるもので、乱暴な言葉を使えば、正直、もういい加減うるせえよ、ということになる。答えあぐねていると「自分探しでしょ」という安易な結論に落ち着かせようとされると、なおさらである。でも質問をしている側には何の悪意もないというのもタチが悪いのだ。

もう理由とか、そんなことは、どうだっていいじゃないか、と、思う。

僕がもしその質問をお遍路さんにぶつけるとしたら、この人とは腹を割って話さなければならないと思った人だけである。たかだか数十分の会話でその質問に対する本当の答えなど得られない。相手からしたら「お仕事何されてるんですか?」「今何歳ですか?」くらいの軽い気持ちで聞いているのだから、こちらも軽く流せばいいものの、最近はそれが煩わしいというか、腹を割って話せないのであれば、その質問に何の意味があるのだろうと思ってしまう。上辺の会話ほどつまらなく、時間を無駄にするものはない。

その場にいた若い女性が、これから出勤で、遅刻したら罰金取られるー的なことを言っていた。たぶん、キャバかセクとかで働いてるんだろうなと思いながら、ああこの流れで昔ホストをやっていたこととかAV女優のヒモだったこととかスカウトしてたこととか話したら盛り上がるかなーとも思ったが、そんな自分語りはせず、ただただ、僕は口をつぐんでいった。

感情が乱れたら、寝るに限る。暖かい布団で眠れるということは、間違いなく幸せで、そのことに単純に感謝しつつ、僕は眠りについた。

【支出】食費1250円

【歩行距離】30.3キロ

【参拝霊場】なし

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【ふぉろーみー】