人間仮免中(卯月妙子)
続編はこちら
さよならもいわずに(上野顕太郎)
外天楼
物凄いよく練られたストーリー。完璧な伏線回収。などなど絶賛されている本作だが、個人的には「とてもよくできた辻褄合わせの作品」という印象を受けた。ミステリーでピースとピースが繋ぎ合わさった時のカタルシスというよりは、全ての事柄が後付け後付けで上手いことピースをねじ込んだ、という風に感じられた。ただこれは批判しているのではなく、その後付けも一級の後付けであるためにむしろ心地良いのだ。
その部分をどう感じるかによってこの作品の価値が分かれると思うが、なんにせよ絶対に一読の価値がある作品であることは間違いないと思う。
さよならタマちゃん
失踪日記
著者自身の体験をもとにしたエッセイ漫画。
この作品も最初に紹介した人間仮免中と同じで著者自身が、自殺未遂、ホームレス生活、ドヤ街、アルコール中毒などなどハードボイルドな生活をそのまま漫画にしているので面白くないはずがない。
おそらくこれをシリアスに描こうと思えば陰鬱な作品にもなったのであろうが、そこも人間仮免中と同じく著者自身が1周回って笑い飛ばしてギャグ漫画のような体裁をとって描いているので、大げさに言えばそこから人間として生きる勇気みたいなものをもらえる。
志乃ちゃんは自分の名前が言えない
こちらは惡の華の押見修造が「吃音 」をテーマに1人の女の子を描いた作品。
感情の機微の描写がきめこまやかでじーんとくる。聲の形とかが好きな人はきっと好きなタイプの作品だと思う。
パンティストッキングのような空の下
ショートショート作家うめざわしゅんさんの作品集。こんなにも骨太な作品を書く人が未だにメジャーでないことにまず驚いた。
前作「一匹と九十九匹と」では社会に適応出来ない「一匹」に焦点を当てて描いていたのに対し、本作に収録されている「唯一者たち」というエピソードは前作に対するアンサーになっていた。
社会不適合者だと思っていた「一匹」が、その他「九十九匹」もまた、その人自身にとっては「一匹」であるということを自覚するお話である。
僕はこの作品を昼下がりの公園のベンチで一気に読んでしまった。
本を閉じ、見上げると、読む前とは景色がほんの少しだけ違ってみえる。読む人を選ぶ感は否めないが、個人的には素晴らしい作品だった。
ねぇ、ママ
池辺葵さんの「ねぇ、ママ」読んでずっと泣いてしまっている。
とても静謐な雰囲気のショートショートたちに、そのまま心を乗せて、静かにページをめくってあっという間に読了。ねぇ、ママ (A.L.C. DX) 池辺葵 https://t.co/3r4OVABTbD @amazonJPさんから
— 柳 俊 (@siokara_yanagi) December 23, 2018