【四国遍路】虹の女神【42日目】

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※もうお遍路を終えてだいぶ時間が経つがぼちぼち当時のメモと写真を頼りに記憶を呼び起こして残り数日の記事を書き上げていこうと思う。

昨日はイヤホンで音楽を聞きながらいつの間にか寝てしまっていた。森にぃが朝早くから仕事だと聞いていたので、確実に見送れるようにアラームをセットしておこうと思ったが、さすがに朝日とともに5時には自然と目が覚めた。どんなに酒が入っていても確実に起きられることに自分でも驚く。

まだ2人は寝ているようだったので、朝日を見ながら軽く瞑想をしに行く。

ここで森にぃとマリ姉に感謝の手紙を書いた。手紙を書くのは慣れていないが、やはり同じ文を綴るのでも、スマホで打つのとは、全然違う行為だと強く感じる。

この旅で俗世と世捨てのちょうど真ん中辺りを、良いバランスで生きたいと思ったが、空はどこにでも繋がっているように、本来そこに境界線はなく、自分が無意識的に区別してしまっているだけなんじゃないかと思うようになった。人間も自然の一部だ。だからこそ一周回ってカラリとした態度で人に接することが出来るようになるのかもしれない。そしてその状態が1番相手と魂で会話するには理想的なのかもしれない。

会いたい人がたくさんいる。行きたい場所もいくつかある。魂が震える瞬間、自分の背中に筋が通り、軸が定まるあの瞬間、その瞬間の感覚を、たくさん感じられるようにしたい。そしてまだ僕には難しいかもしれないが、いつかその感覚を人におすそ分けできるような、そんな人間になりたいかもしれない、と、ぼんやりと思った。

森ご夫婦と昼食をご一緒した後、車で郷照寺まで巻き戻してもらう。いざ別れが近づくとやはり寂しいものだ。

車の中から不思議な、平らな虹を見た。虹の女神という映画に出てきたような、稀に見れるという不思議な虹だった。出発の門出を天にも味方されているような気になる。

別れ際多くは語らず、手紙だけお渡しし、ハグしてお別れをした。

結願の寺である大窪寺まではもう88キロしかない。旅の終わりが近づいているのを感じる。

森ご夫婦と別れた後79番天皇寺に向かって歩く。天皇寺は神社と境内が繋がっているようで山門も納経所もどこか分かりずらかった。

天皇寺を打った後、今日の野宿場所も決めずにのんびりと歩いていると前から一台の車が来て軽くクラクションを鳴らされる。誰かと思えば先ほど天皇寺で納経所の場所と、次の国分寺へのへんろ道を尋ねた方だった。「ちょっと話してもいい?」と聞かれたが、別に急いでいるわけでもないし、人との出会いが主目的の僕にとっては大歓迎である。

何でもこの方は今日が逆打ち遍路の初日らしく、今日、まともに人と会話をしていなかったらしい。お遍路始めたての僕がそうであったように、人間、誰とも話さない時間が続けば、誰かと何かを話したくなるのが性(さが)なのだろう。

軽く立ち話がてら僕が野宿遍路であることを告げると、「なんなら今日ここ泊まる?」と車内を指差した。基本的に逆打ちのお遍路さんとはルートが真逆であるため、一度会ったら最後、再会することは滅多にない。これも一期一会のご縁だなぁと思い、有り難くお言葉に甘えさせて頂き、今日はこの方と一緒に車中泊することにした。

立ち話もなんだということでとりあえずこの方が行きたいと言っている一鶴という地鶏店に行くことに。車で丸亀までひとっ飛びし、一鶴で親鶏を食す。砂肝のような歯応えのある食感がんまい。日本酒もすすむ。

話してみれば、この方は広島から来た美容師の方で、一ヶ月に連休が1回あるので、それを利用して何回かに分けて車で四国遍路を廻ろうと思っているらしい。

お互いの人生の話を色々とする。相手と肚を割って話すためには、自分もノーガードで、相手にどんなジャブを撃ち込まれてもいいよーというスタンスで話すことが大切だと思う。だからこそおおっぴろげに自分の話をした。

ここであまり詳細を書くのもアレなのでザックリ説明すると、なんでもこの方は20歳の頃に一家離散など精神的にダメージが来ることが3つほど重なり、それが遠因で鬱になってしまったらしい。

大体それが20年前くらいのことらしく、その頃はまだまだ鬱という病気が社会的に認知されておらず、通っていた美容学校でもだいぶ苦しんだらしい。けれどもそんな自分を救ってくれたのが、今の奥さんだというのだ。

遍路で出会う人は、みんなそれぞれ人生がある。一人一人が、ちゃんと生きているのを感じる。勿論東京でも同じだと思う。そう感じられなかったのは、ただ単に自分が、足を止めて、一人の人間に対してきちんと向き合ってこなかっただけなんだと、廻り廻って思う。

この日は結局この方の車で車中泊をさせてもらうことになり、夜更けまで話し込んだ。

【支出】飲食費なし

【歩行距離】9.5キロ

【参拝霊場】79

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